独活日記
今から1年より少し前。
昔の恋人に再会する夢を見て、そこで言われたこと。
そしてその晩のまた別の夢で、ただ1人山形にいる祖母にも言われたこと。
“独活だね。うん。独活、独活だよ。”
彼は伏し目がちながら、感心して笑う。
昔よく見た懐かしい角度。
湧き出るものを少し抑え込むような笑顔で。
目が合わないのに、口角がしっかり上がっているのが見えて。私はそれが好きだった。
隠しきれない、心の底から込み上げてくる笑顔といった感じで。
うなづきながら何度も何度も。
噛みしめるようにそう繰り返していた。
祖母は私のことをまっすぐ見ながら、同じように言った。
意味がわからないようでわかる不思議な夢だった。
私は漢方を数年勉強しているから、独活がウドである事はすぐにわかった。
そしてウドは育ち過ぎれば硬くて食べられず。
だからといって家具にするには柔らかく。
育ち過ぎたウドは、使い道がない。
うどの大木という、まぁ悪い例え。
当時32.3歳の私もちょうどそんな感じで。
ただ、これを言葉にするとあまりに残酷だから各々に汲み取っていただくとして。
まぁ。未婚、子ナシ、いい歳してフリーターで納税額も当然低いという。
世間様から白い目で見られても仕方ない存在。
ただ、友人、家族、大切な人。
そして、もし頼られたなら、そんな白い目を向けた人たちでも、助けることのできる人間でいられるように。努力はしてきたのです。
恩を売りたいというよりは、ただ後悔したくないのです。
困っている時に知りたいと思うような、相談してみようと思えるような。
そんな知識と技術を持った人間であるようにと。
そうすれば独身でも、子供がいなくても、私のもとに人が訪れ、完全なる孤独は避けられるのではないかと。
他者と助け合って生きていくために、求められるものをきちんと持っていたいと。
世間のいう、うどの大木のイメージと重なる自分に乾いた痛みを感じつつも。
その一方で、1人で生きても大丈夫なようにと積み上げているその様は、婚活の真逆。まさに独身活動。独活なわけです。
そしてその夢を見たその日から、この名前で、いつか日記を書こうと思ったのです。
やっと書き始めることができました。
漢方、養生、薬膳、園芸。
それから得意の哀れな恋や、音楽などについても書いていこうかと思っております。
今までしてきた言葉遊びをここで少しは役に立つ情報とともに。
孤独のなせる技。
言葉と愛を紡ぎます。